BIMで建築が夢をみる
#70 「人間は二次元世界を、天使は三次元世界を動く。」
国土交通省の動向、建築確認申請を取り巻く状況など、少しばかり硬い話が続きましたので、今回は、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí)です。表題の「人間は二次元世界を、天使は三次元世界を動く。」は、彼が弟子たちに語った言葉として言い伝えられています。2次元と3次元は、そのくらいの違いがあるという示唆として、考えてみるべきでしょう。
役所に提出するために「仕方なく描いた」図面?!
建築の実務経験はありません。それでも、建築の素人としても、ガウディはどのようにしてサグラダ・ファミリアに象徴されるような建物を設計したのか興味を持ち続けてきました。
2019年1月6日のNHKスペシャル「サグラダ・ファミリア 天才ガウディの謎に挑む」を観た方もあると思いますが、その番組の中で、ガウディが当時、発明されたばかりの3次元メガネを使用していたという新しい発見がありました。やっぱりそうだったのか。ガウディは3次元メガネを通して検証していたわけです。
サグラダ・ファミリアの建設に関わっている彫刻家、外尾悦郎氏の著書「ガウディの伝言」(光文社新書)を読むと、ガウディが2次元図面と3次元模型に対して、どのように考えていたのかを知ることができます。それによると、ガウディは図面を役所に提出するために「仕方なく描いた」と語ったそうです。
ガウディの中では、図面では到底、表現できないようなイメージが拡がっていたに違いありません。それを彼は「人間は二次元世界を、天使は三次元世界を動く。」という言葉で表現したのでしょう。ガウディは天使の世界で生き、もしかすると、彼自身がBIMだったのに違いありません。
「ガウディの伝言」(外尾悦郎著:光文社新書)
ガウディの形をデジタルツールでマイニング(掘り出し)
1882年の着工からすでに130余年経過したサグラダ・ファミリアは、現在、BIMなどのデジタルツールを使用したこともあり、2026年完成と公表されています。サグラダ・ファミリアの工房でコンピュータを駆使して建設に貢献しているのがメルボルン大学建築学科教授のマーク・バリー (Mark Burry) 氏です。バリー氏には2015年10月にインタビューする機会を得ました。
それらよると、バリー氏はガウディが残した模型をデジタルツールで1分の1の原寸の3次元モデルとして再現、NCカッターによる石材の加工など製造工程に用いています。
「デジタルツールは形の生成により自由度の高い航空機製造用のシステムを用いている」「ガウディの中に潜在していた形を模型を媒介としてデジタルツールでマイニング(掘り出し)している」。ガウディの形をマイニングし、再現する過程で、ガウディが乗り移ったように感じることもあるそうです。その瞬間には、何ものにも代えがたい喜びを感じるとも語っていました。
なお、バリー氏の活動風景などが活写された映画「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」(アップリンク)はDVD化されており、手に入ります。
マーク・バリー氏の作業風景
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