BIMで建築が夢をみる

#01 先駆者たちはどんな夢をみていたのだろうか

建築のデジタル化の歴史を振り返ってみましょう。現在進行形で進化している領域のためか、建築の側からはいまだに認知されていないためか、建築のデジタル化の歴史を網羅的に記録している書物などには巡り合っていません。筆者が知らないだけなのかもしれません。編集者として関わってきた範囲内で知り得たことを紹介することとします。

1982年に「建築とコンピュータ」誌を創刊するため、事前調査を進める中で訪問したのが筑波研究学園都市の通産省工業技術院製品科学研究所です。ある研究室に入ると、画面上に、ワイヤーフレームで同研究所の建物が表示されていました。最近のBIMソフトの性能と比較すると、驚くほどの落差ですが、初めてみた際には感動し、大いなる可能性を感じたものです。

導入されていたのはPS2と呼ばれていたピクチャー・システム2で、米国のエバンス・アンド・サザーランド(Evans and Sutherland)社製のシステムでした。社名は、創設者のデービッド・キャノン・エバンス(David Cannon Evans)とアイバン・エドワード・サザーランド(Ivan Edward Sutherland)に由来しています。会社設立は、1968年のことです。

PS2で画面上に表示された
通産省工業技術院製品科学研所の建物

アイバン・エドワード・サザーランド

このサザーランドこそがまさに今に続く、CAD、CG、VRの始祖と呼ばれる人物です。彼が作った「スケッチパッド(Sketchpad)」はCADの原型として知られていますし、その際に採用された入力手法はGUI((Graphical User Interface)と呼ばれています。また、驚くことに、最近、話題のバーチャルリアリティ(Virtual Reality)と拡張現実(Augmented Reality)に用いるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)も考案し、初歩的な実験を行っています。

先駆的とはこういうことでしょう。先駆的とは、優れた射程距離を持つ構想をいかに持ち得るかということでしょう。半世紀も前に構想されたことが、今、私たちの目の前で起こっています。彼らには、その過半が見えていたに違いありません。そして、今も、どれだけ先駆的なのかが問われていますし、どれだけの射程距離をもって、近未来を構想するのかが試されています。

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