BIMで建築が夢をみる

#21 生き残り策はBIMを用いて「資金調達」に貢献するなど設計自体の射程距離を拡張すること

「BIMで建築が夢をみる」ためにも、今回は、敢えて生々しい現実の話をします。

複数メディアで大手ゼネコン・準大手ゼネコンの17年第2四半期決算内容が報じられました。「全体の20社の内で16社が粗利10%を越え、16社では利益で最高益」。「受注環境が相変わらず良好なのに加えて、無理な受注が減り、赤字工事が減った」ためとしています。

最上位の大林組では、売上高は6.8%増の9,174億円。社会を基底から支える大きな産業であるのを改めて感じます。もうひとつの注目記事は、日刊建設工業新聞に11月15日付けで掲載された「大成建設/取引企業の支払い条件緩和/18年4月から手形期間を60日に」でした。
どんなに最上部が儲かっていても、それが下の方に流れてこなければ困ります。具体的には、90日の手形サイトを60日に短縮するとのこと。そのために大成建設では「単純計算で500億円程度の資金が必要」とも報じています。
※参照:日刊建設工業新聞
大成建設/取引企業の支払い条件緩和/18年4月から手形期間を60日に [2017年11月15日3面]

筆者は、建築の業界内部で仕事をしたことはなく、支払いなどの商習慣には詳しくないので、この記事で驚いたのは、「6割程度の支払いが手形」とのことでした。ICT分野では、電子決済、仮想通貨、ブロックチェーンと話題が沸騰している中で、いまだに手形決済なのかとの思いです。余りにも大きな産業規模なのと、ICTの対局にあるアセット(リアル)を扱うため、この領域にまで及ぶ構造改革には困難が伴うのでしょう。
日本建設業連合会(日建連)は下請取引の適正化に向けた自主行動計画を策定し、この中に「将来的な努力目標として手形期間60日以内を記載」とも報じているのと合わせて、下請など中小企業の取引条件改善に向けて状況が動き始めたのは良いことです。

本題に入りましょう。ある著名な大手設計事務所でのオフレコ談義で、「消費税だって8%なのに設計料は…」との話となりました。ゼネコンの売上が1兆円に近づこうとしているのに、業態が異なるにしろ、その落差は、余りにも大き過ぎます。
日経アーキテクチュアが「実施設計がなくなる日-設計事務所の業態が変わる」と衝撃的に報じたのは14年10月10日号でした。記事では、実施設計がなくなるのと同時に、設計料のかなりの部分を占める実施設計「料」もなくなるとも報じていました。
※参照:日刊建設工業新聞
BIMの課題と可能性・72/樋口一希/東畑版IPD方式の模索・1 [2015年7月2日]

ここまで見てきたような「業としての建築」「建設」の産業構造は、BIMを導入したからといって、一朝一夕では変わらないでしょう。それでもBIM導入と運用で設計事務所=設計の自立性を再構築することはできます。そこでのキーワードは、「施主:発注者を味方にする」です。

BIM運用で「資金調達」に貢献する

  • 待機児童対策が急務の中、認可保育園の設立が相い次いでいます。一定の規模、機能を有すれば、行政から補助金が支給されるのも大きな動機となっています。
    新しく保育園を設計する際に、補助金申請のためにも、設計行為を補助金申請手続きにまで拡張する必要があります。それらノウハウを蓄え、設計+補助金申請時のコンサルタント業務を進めている事例。多岐に渡る関係者間の合意形成、申請書類作成などに、BIMによるデジタル情報が大いに貢献しています。
  • ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)。住宅の断熱性能、省エネ性能を向上させたり、太陽光発電などでエネルギーを創ることによって、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指します。
    行政では、ZEHゼッチの仕様の住宅建設を推進するため、補助金を出し、普及を促進しています。このZEH(ゼッチ)仕様の住宅建設に際して、BIMが大いに威力を発揮しています。
  • 外皮性能計算

    申請図

BIMだから「改修設計」が実現する

  • 海岸に面した敷地に建つ瀟洒な住宅。想定外の高潮で、築1年半で、一階が水没してしまいました。BIMで設計していたため、RC造の躯体は勿論、内装から作り付けの家具に至るまで、デジタル情報は保存されていました。施主からの要請で、改修設計は正味、一週間で完了しています。
  • 想定外の緊急事態でしたが、改修設計に至る時間軸を伸ばせば、FM(施設管理)業務となりますし、当然のことのように、BIMによるデジタル情報の優位性は明らかです。施主の安心も、ここに極まりという事例です。

BIMによった他業種と「協働」する

  • 相続税制が変わり、想定外の相続対策を講じざるを得ないケースが増える中で、建築のプロフェッショナルとして、税理士、弁護士、公認会計士などと協働して、的確な解決策を立案するニーズが急増しています。その際にも、BIMによるデジタル情報を根拠にして、リノベーション後の資産価値を正確に測定するなど、BIM運用のメリットは大です。
  • BIMデータ

    長期修繕計画

これらは共に、個人経営の設計事務所でのBIM運用事例です。法律で規定されている設計料は安すぎると思いますが、改善を待っていても致し方なしでしょう。設計自体の射程距離を、ありとあらゆる方法で拡張し、自律、自立的な活動を進める。そのためこそ、BIMは有力なツールとなるはずです。

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