BIMで建築が夢をみる

#17 設計事務所としてBIM=I(Information)を徹底利用した業務範囲の拡張

前回、同様、9月14日に大阪、9月28日に東京で開催された福井コンピュータアーキテクト主催の「Japan-BIM事例フォーラム」における「発注者がBIMを活用する時代」での講演からの報告です。

スターツコーポレーション株式会社の「建物はすべてデータになる、BIM-FM PLATFORM」~スターツが仕掛ける建築・不動産のデジタル革命~」に引き続き、登壇したのは畝啓建築設計事務所株式会社の代表の畝啓氏でした。

同事務所は、世界遺産の平等院鳳凰堂がある宇治市に本社を置く意匠系の設計事務所で、所長(代表)の畝啓氏が実質的に一人で運営しています。講演のテーマは、「個人事務所が模索するBIM-FMの活用と今後の展望~本格的BIM時代を見据えた設計事務所としての取組み~」でした。

初めて訪問したのは15年3月、日刊建設工業新聞「BIMの課題と可能性」65〜67に「施主に気づきを与えるBIM」として報告しています。この段階では、BIMによる建物の3次元モデルが建築の非専門家である施主や近隣住民との合意形成にメリット大であることを中心に報告しました。

その後も継続的にBIM運用の進化を追跡しているのですが、次に衝撃を受けたのは、畝啓氏の「作業としての(2次元図面の)製図は終わった」という発言でした。BIM運用のメリットのひとつとして、3次元モデルと2次元図面の連動が上げられます。従来までの2次元CADでの製図では、例えば「平立断」の整合性チェックにも膨大に時間を要していましたが、BIMでは、大元の3次元モデルを修正すれば、「平立断」は同時並行的に修正され、目視でのチェックは不要となります。

一方で、その際に、BIMモデルから生成される2次元図面の(表現)精度が甘いとの課題もあったのですが、BIMソフト「GLOOBE」では、テンプレート整備などで、ほぼ加筆修正せずに実施図面まで生成されるようになっています。それを徹底活用して、畝啓氏は、確認申請(の直前)まで、2次元図面の出力はしないとのことでした。

今回の講演で受けた衝撃は、それを遥かに超えたものでした。BIMは、狭義には、3次元のモデリングシステムとして機能し、合意形成や2次元図面の自動生成に威力を発揮しますが、同時に、対象建物が包含するさまざまなBIM=I(Information)を紐付けられます。そのためフロントローディングで早期の積算が実現したり、竣工後のFM(施設管理)業務にも利活用できます。

●工事項目の割り振り

意匠系の設計事務所は、建物の「形態(形)」を設計すると共に、実は、BIM=I(Information)も入力、構築しています。それらのBIM=I(Information)を利活用の目的に応じて入力、構築すれば、応用範囲は広がります。同事務所では、意匠系の設計事務所の業務フローを劇的に革新するような変化が起こっています。

既設建物のオーナーがいます。事業承継にあたり、不動産会社は売却すればと提案してくる。税理士は、借入金で賃貸マンションを建てて節税したらと提案してくる。流行りのリノベーションはどうかとの思いもある。相続の関係も複雑に入り組んでいる。そんなオーナーから意匠系の設計事務所が相談をされても、従来であれば、取り付く島もなかったでしょう。

畝啓氏は、既存不適格の確認含めて、その既設建物をBIMでモデル化しました。その際に、当然のように、可能な範囲で、建物が包含するBIM=I(Information)も入力していきました。すると、それらバックデータを根拠として、売却、賃貸(節税)、リノベーションと、さまざまな状況に応じた数値的な判断が可能となったわけです。

膨大な空き家対策が叫ばれています。今後は、極論すれば、建築を建てない建築業、設計をしない設計事務所も追求せざるを得ないかもしれません。そんな状況下、設計事務所にとって、既設建物を対象とした改修設計+BIM-FM連携業務が事業として成立すると気づいた畝啓氏の処には、既設建物のオーナー、弁護士や不動産鑑定士などからの相談も増えています。

●長期修繕計画

※参考
65「施主に気づきを与えるBIM・1」[2015年5月14日]
66「施主に気づきを与えるBIM・2」[2015年5月21日]
67「施主に気づきを与えるBIM・3」[2015年5月28日]

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